この所、庭師さんのようなブログの内容になっているので、ついでに真面目な話も。
家づくりの際、庭・外構を建物と同時に計画をすることはとても重要です。
よく、
「庭・外構は後々余裕ができてから・・・」
という話がよく出てきます。
しかし、実際は「後々・・・」というタイミングはほとんどやってきません。
後回しにしたら、予算も時間もなかなかできないものです。
そうこうするうちに、敷地の余白は車と自転車、そして無粋極まりない(失礼)物置に占領されてしまいます。
とは言っても、予算には限りが・・・
おっしゃる通り。限りがあります。だからこそ建物と庭・外溝を一緒に「計画(建物の計画、予算計画などなど)」する必要があるのです。
建物の計画については、ちょっと置いておいて(ここが本業ではあるのですが)
庭づくりに関しては、なかなか予算をどれだけ確保すればいいのかわかりにくい部分もあるかと思います。また相手は自然物なので、どの程度の量の植物を想定していいのかもわかりにくいです。しかも奴らは生長しますので、ますますイメージがわきにくい・・・。
プレゼンテーションをする時に、庭・外溝も一緒に計画をしてプレゼンをさせていただくのですが、イメージがわかなくて困っている住まい手に対していつもお話しさせていただくことがあります。それが
「とりあえず、大きな樹(シンボルツリー)を植えましょう。」
という言葉。樹が1本だけの庭は正直寂しい気もしますが、小さな苗木を何本も植えるより、大きな樹を1本植える方が風景をつくりやすくなります。また、後々大きな樹が欲しくなっても、周りにいろんなものが置いてあったり、つくられてあったりすると、植えるスペースを確保することも難しくなります。搬入も困難ですし。
なのでまず、最初に大きな樹を植える場所を確保し、とにかく植える。大きな樹はそれだけで存在感がありますし、安心感も与えてくれます。
写真はスタジオの庭。
右手に植えられているのは大樹の代名詞ケヤキ。
左手の樹々はケヤキ。それとコナラ。アオダモ、アズキナシ、アオハダの合体樹。葉がついているのがシラカシです。
どれも日本の山、里山に生えている「雑木」です。
父親には「ケヤキなんか植えたら大きくなって大変だぞ。」と会うたびに言われますが、幸い隣地との距離が取れているので、そこは上手に付き合えると思っています。大きくなる樹はどうしても植えたかったしそれに庭師さんが植えたそうでしたし(笑)。
雑木は古くから人里で人間の営みに寄り添って生きてきた樹種たちです。なので本来人間の生活との相性は抜群なんです。大きくなりそうなら「適度に」枝を払ってやればいい(むやみに枝を払いすぎると逆に樹形が崩れ、大変なことになります。なんでも適度が重要です)。それでも大きくなりすぎたら細い幹を残して伐採すればいい。彼らは何度でも再生してくれます。そうすることで長い時間、ずっと一緒に生きていくことができます。
敷地条件はそれぞれ違いますので、「大きな樹」という対象ももちろん変わってきます。でも植えることのできる可能な限りの大きな樹を植えることをお勧めします。それも落葉樹の株立ちを。
落葉樹は夏の日射を遮り、木陰を提供してくれます。冬には葉を落とし、日射を室内へ導きます。春には新芽のさわやかさ、秋には燃えるような紅葉と、いいことづくめです。
また、樹を植えた地面は植物の蒸散効果により冷やされ(気化熱)、風を生み出します。
機械に頼らなくても、快適に暮らせる環境を頼んでもいないのに勝手に用意してくれます。
こんな気の利いた相棒を、そばに置いておかない手はありません。水やり以外、なんの手もかからないんですよ。最高じゃないですか。これをメンテナンスフリーと言わずして何という(笑)。
落ち葉の処理を心配される方がいらっしゃいますが、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。そこそこ掃除をして、後は風に任せましょう。落葉樹の落ち葉は軽く、遠くまで飛んで行ってしまいますので(笑)。それに皆が植えればお互い様です。
長々と書きましたが、せっかく新しい住まいを手に入れて、快適な暮らしを営もうというのに、コンクリートで固められた環境で暮らすなんて寂しくないですか?難しく考えず、
「大きな樹」
を植えてみてください。それだけで効果覿面。生活が何倍も豊かになります。それにコンクリートを打設するよりかなり「格安」です。コスパ高すぎます。
住宅の設計が専門ですが、お庭の計画・リノベーションもご相談に乗らせていただきます。
新築だけじゃなくて改修でも。大枚はたいて家をいじる前に、ちょっと家の外にも目を向けてみてください。できることがまだまだたくさんあるかもしれません。耐震・省エネリフォーム、リノベーションの際も、是非、庭・外溝を見直してみてください。
より豊かな暮らしを手に入れるために、「大きな樹を植えましょう」ってお話でした。